WTO閣僚会議決裂 農業問題先送り
○ メキシコのカンクンで開いていた世界貿易機関(WTO)閣僚会議は、先進国と途上国グループとの亀裂が埋まらず、最終日の14日午後6時に最終合意案をまとめずに閉幕した。2004年末を目指していた新ラウンド(新多角的通商交渉)の期限内合意は絶望的となった。
○ WTOは12月15日にジュネーブで開く一般理事会まで新ラウンドを事実上凍結する。
○ 交渉期限を2006年末まで2年間延長するシナリオもにわかに現実味を帯びてきた。
○ 今後はメキシコを初めとする各国との二国間自由貿易協定(FTA)の動向が注視される。
政府売渡麦価据置決定
○ 平成14年12月13日に開催された主要食糧分科会において政府売渡麦価は3年連続の据置で決定した。
○ 外麦は主要輸出国の旱魃等により高値で推移すると共に為替相場は円安基調で推移、また内麦は生産数量が急増しており、極めて厳しい財政事情の中で行政当局が製粉関連業界の置かれている厳しい経営環境を理解した上で決断を下してくれたものと思います。
○ 据置では業界が抱える諸問題(海外からの小麦粉調製品、小麦粉二次加工製品の流入増加、加工メーカーの海外移転による産業空洞化の拡大、末端流通での低価格志向の強まりの業界への波及)の解決が先送りとなり、業界の厳しさが継続することになります。
○ 内外価格差縮小という方向は「新たな麦政策大綱」で示された通り当局、製粉業界一致して理解しているところでありますが、その実施状況等の検証、新たな売渡価格の算定方式を含めた麦政策全般の見直しを早急に検討すると食糧庁長官からの回答を得たことは製粉関連業界の取組みの成果と言えます。製粉団体も検討論議に参加して行くことになると思います。
○ 但し、WTO次期農業交渉での国家貿易問題の扱いや、米政策改革大綱に伴う内麦生産への影響、予算など多くの課題が複合的に関連しているだけに、見直し着手に漕ぎ着けたものの進展させて行くには課題は多いと思われます。
食糧庁の廃止
○ 本年7月を目途に食糧庁の組織が廃止となります。
食品の安全性の問題がBSEを契機として、全体として行政において食品リスク管理の強化をして行くという全体組織の見直しの一環である。農林水産省の中に「消費安全局」というリスク管理を専門とする、消費者行政を専門とする新しい部局が新設される。
政府全体としては内閣府の中に食品安全委員会及び事務局が設置される。
○ 行革の中、スクラップアンドビルドが不可避であるのでその一環で食糧庁は廃止となるが米麦の国家貿易を始めとする主要食糧業務は「総合食料局」の中の「食糧部」というところでスリム化して担っていくことになった。
食糧部には「計画課」「消費流通課」「食糧貿易課」の3課が出来、小麦粉卸の所管は「消費流通課」となると思われます。
WTO次期農業交渉
○ WTO交渉の終結は2005年1月1日となっているが農業分野のモダリティ(大枠)合意(大枠は農産物関税や補助金の引下げ方式や数値目標、期間などを示す。農業自由化の水準が事実上ここで決まる)は本年3月末を予定していたが農産物関税を例外なく25%以下に下げる方式を主張する米国、オーストラリアなど農産物輸出国と品目ごとに違う対応を認める方式
(どの品目も最低で15%、全品目平均で36%)を唱える日本・EUの間に接点が無い状況にある。
議長が提示したモダリティ一次案も双方から修正が必要と不調に終わっている。
○ 日本はコメの高関税の維持が狙い。最低輸入義務(ミニマムアクセス)数量の削減も求めている。
農水省は、食糧の安全保障や水田の国土保全機能など「農業の多面的な役割」の観点を掲げて、競争力が低くてもコメ作りを中心にした国内農業を維持する必要があると訴えてきた。
関税の引き下げ幅がどうなるのか、日本の米麦政策に関連する輸入国家貿易問題の扱われ方が不透明であるなど交渉は予断を許さない状況にあり注目しておく必要がある。
|